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入試で役立つ化学 銅と硝酸の反応から見えること

2024年03月16日

前回の記事はこちら→入試で役立つ化学 エンタルピーについて 

 

今回は銅と硝酸の反応から見えることをテーマに書いておこうと思います。

 

金属が酸に溶けるか溶けないか

 

 

銅と硝酸の反応の話に入る前に、金属が酸に溶けるか溶けないかを考えておきます。

この話題は教科書ではイオン化傾向のところで出てきますが、そこでは、酸を希塩酸や希硫酸といった酸化力がない酸と硝酸や熱濃硫酸といった酸化力がある酸に分けて考えています。

 

希塩酸や希硫酸はH+が多く存在するので、Hよりもイオン化傾向が大きい金属は金属が酸化されてイオンになり、H+が単体となるので、水素を発生して溶けます。

たとえば鉄は希塩酸で水素を発生して溶けます。

(ただし鉛はイオン化傾向がHより大きいですが、鉛の表面に塩化鉛や硫酸鉛ができて溶けにくくなってしまいます。)

つまり希塩酸や希硫酸ではHよりイオン化傾向が小さい銅や銀は溶かすことができません。

そこで、銅や銀を溶かすには酸化力が強い硝酸や熱濃硫酸を使う必要があるわけです。

 

 

銅と希硝酸、銅と濃硝酸のそれぞれの反応

 

 

無機化学分野では物質の各論が展開されるため、化学反応式が数多く出てきます。

受験に向けて、これらを一つ一つ覚えていくことになるのですが、その中でも頻繁に出題される反応式があります。

 

今回は受験に頻出の化学反応式である銅と希硝酸、銅と濃硝酸の反応について深掘りしてみます。

希硝酸と濃硝酸はともに水溶液で濃度の違いだけなので、化学反応式では同じHNO3と書かれます。

しかし、銅と濃度の違う硝酸との反応では生成物が異なるという一見不思議とも思えることが起こります。

 

教科書には、銅と希硝酸の反応では一酸化窒素が、銅と濃硝酸の反応では二酸化窒素が発生すると書かれています。

 

これらの化学反応式を直接書かせる問題はよく出題されるので、何とかして書けるようにしておかなければならないのですが、いくつか方法が考えられます。

 

その方法を3つほど挙げてみると、

1.化学反応式の反応物の係数を暗記しておく方法

2.未定係数法で係数を決める方法

3.酸化還元反応として作り上げる方法

があります。

 

1つ目の方法は、「3銅8硝」「1銅4硝」といった語呂合わせを使用して、化学反応式を作ります。

2つ目の方法は、反応物と生成物を覚えておいて、未定係数法で係数を決めます。

今回は3つ目の方法を深掘りしてみます。

 

これらの反応は単体の銅を含むので、酸化還元反応になります。

酸化還元反応ならば、半反応式を2つ作って、電子を消去する方法で化学反応式を作ることができます。

 

酸化数を調べてみます。

CuはCu2+となるので、酸化数の変化は0から+2となり、酸化されています。

半反応式はCu → Cu2+ + 2e-となります。

希硝酸HNO3はNOになるので、Nの酸化数の変化は+5から+2となり、還元されています。

半反応式はHNO3 + 3H+ + 3e- → NO + 2H2Oとなります。

濃硝酸HNO3はNO2になるので、Nの酸化数の変化は+5から+4となり、還元されています。

半反応式はHNO3 + H+ + e- → NO2 + H2Oとなります。

半反応式は酸化還元反応の基本なので、スムーズに書けるようにしておきましょう。

 

 

さて、

銅と希硝酸の反応では、電子を消去すると、

3Cu + 2 HNO3 + 6 H+ → 3Cu2+ + 2NO + 4 H2Oとなります。

ここで、6 H+が必要とされるのですが、反応物でH+を供給できるのは硝酸HNO3なので、

3Cu + 2 HNO3 + 6 HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4 H2Oとなります。

つまり、3molのCuに対して2molのHNO3が酸化剤として、6molのHNO3がH+を供給する役割を担っています。

同じ物質はまとめて、

3Cu + 8 HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4 H2Oとなります。

いわゆる「3銅8硝」です。

 

銅と濃硝酸の反応も同じようして作ってみます。

Cu + 2 HNO3 + 2 H+ → Cu2+ + 2 NO2 + 2 H2Oとなります。

ここで、2 H+が必要とされるのですが、反応物でH+を供給できるのは硝酸HNO3なので、

Cu + 2 HNO3 + 2HNO3 → Cu(NO3)2 + 2 NO2 + 2 H2Oとなります。

つまり、1molのCuに対して2molのHNO3が酸化剤として、2molのHNO3がH+を供給する役割を担っています。

同じ物質はまとめて、

Cu + 4 HNO3 → Cu(NO3)2 + 2 NO2 + 2 H2Oとなります。

いわゆる「1銅4硝」です。

 

 

こういう化学反応式の作り方ができると、酸化還元反応についての理解が深まるので、

できるようにしておきたいところです。

 

 

一酸化窒素と二酸化窒素

 

 

一酸化窒素と二酸化窒素について覚えておくべきことを整理しておきましょう。

 

化学式はNOとNO2でいずれも気体ですから、似ていそうですが性質はかなり違います。

一酸化窒素は、

無色無臭で、水には溶けにくい。(一酸化炭素も水に溶けにくいです。一緒に覚えましょう。)

酸性とも塩基性とも言えず、捕集方法は水上置換になります。

空気中では酸化されて二酸化窒素に変化します。

 

二酸化窒素は、

赤褐色で刺激臭、水に溶けます。酸性の溶液になりますので、酸性の気体に分類されます。

空気より重いので、捕集方法は下方置換になります。

常温では四酸化二窒素と平衡状態になります。(化学平衡の単元で出てくる可逆反応です。)

 

 

はじめに、銅と濃度の違う硝酸との反応では生成物が異なるという一見不思議とも思えることが起こります、と書きましたが、

それぞれの反応で発生する気体の性質からみると、

希硝酸では水の割合が大きいので、NO2が発生しても水に溶けてしまう、

濃硝酸では硝酸の割合が大きいので、NOが発生しても酸化されてNO2に変化してしまう、

ということが大きな要因でしょう。(別の要因もありそうです。)

 

また、硝酸は、熱や光に弱いので、褐色ビンにいれて冷暗所に保管します。

硝酸の工業的製法にはオストワルト法がありますが、これはまた別の機会にしたいと思います。

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