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植物ホルモンを極める!(高校生物)②
2022年09月03日
皆さん、こんにちは!「高校生物を極める」シリーズ第2弾、今回も植物ホルモンについてです。
夏休みも終わり、学校生活も再開しました。生徒の皆さんはこの夏、どう過ごしましたか?沢山勉強した、自信をつけた、課題に追われた、高校野球ばかり見ていた、それぞれの夏を過ごしたのではないでしょうか。夏休みモードを学校モードに切り替えて、再び頑張っていきましょう。
さて、前回のおさらいです。高校生物、植物ホルモンは以下の6つ。
アブシシン酸 ジベレリン オーキシン サイトカイニン エチレン フロリゲン
今回はこの中のオーキシンとサイトカイニンについて書いていきます。
植物を種から育てたことがありますか?種からは芽が出ます。その芽を幼葉鞘と言います。幼葉鞘に光が当たると、光の方向に曲がってきます。この事を光屈性と言います。この光屈性に関与しているのがオーキシンです。こんな当たり前の現象なんですが、オーキシンが早速活躍しています。
仕組みですが、まず、幼葉鞘の先端部に光が当たると、オーキシンが光が当たっている側から反対側に移動します。陰側のオーキシン濃度が大きくなります。オーキシンには細胞の伸長成長を促進する働きがありますので、陰側の方がぐんぐん育って、茎は光の方に屈曲するのです。植物の合成する天然のオーキシンは化学物質、インドール酢酸(IAA)といいます。
オーキシンには不思議な性質があります。茎の中を垂直、つまり縦の方向に移動する時には、先端部から根本部分へと一方方向にしか移動しないのです。植物の上下を逆にしても同じです。このような方向性を極性といいます。極性にしたがった移動を極性移動といいます。重力の方向に左右されないという事です。
オーキシンは芽の先端(これを頂芽という)で作られます。ここで、この頂芽を切り取ってしまうとどうなるのでしょうか。実は頂芽を切り取ると、植物は横(側芽)に成長し始めます。ところが、切り取った頂芽の切り口にオーキシンを含む寒天片をおくと、再び側芽の成長は止まります。つまり、頂芽でつくられたオーキシンは下方に移動して側芽の成長を抑制していることが分かります。この現象を頂芽優勢といいます。そして、この頂芽優勢には別の植物ホルモンも関係しています。これが、サイトカイニンです。頂芽が存在する状態で、側芽にサイトカイニンを与えると、側芽は成長を始めます。つまり側芽の成長にはサイトカイニンが必要で、通常は頂芽で作られたオーキシンによってサイトカイニンの合成が抑制されている。と考えられます。
さし木ってしっていますか。植物の枝を切って地面にさしておくと、勝手に根っこが出て、新しい植物体になります。不思議ですよね。摩訶不思議。こういった根以外の組織の細胞から形成される根を不定根といいます。この不定根の形成もオーキシンによって促進されます。
今回はオーキシンとサイトカイニンについて学んできました。光屈性や極性移動、頂芽優勢などの様々な現象に関係している植物ホルモンである事が分かりましたね。特にオーキシン、つまりインドール酢酸は「これが無ければ植物は育たない!」という程、重要な植物ホルモンでした。しっかりと理解しましょう。さて、ここまで書いていて、私自身、少し思ったことがあります。今回はまとめの後に、もうひと段落、書こうと思います。
植物の作り出すオーキシンは天然のオーキシンです。一方、人間の手によって作り出された合成のオーキシンも存在します。多くの場合、主に農業において正しく使用されています。しかし、1975年に終結したベトナム戦争では枯葉剤として使用され、甚大な被害をもたらしました。オーキシンの副産物が原因だと考えられています。植物の成長には大活躍のオーキシンにも、こういった悲しい歴史があるんですね。いったい戦争と平和ってなんなんでしょうか。愛と勇気だけが友達でしょう。
植物ホルモンの話を書いている途中、トルストイの「戦争と平和」を少し読みました。皆さんも読んでみてください。とても読み応えのある本です。ロシアの人々とナポレオンとの戦争を描いた長編小説ですが、実は戦争の話ではないと思います。若者達が生きる喜びや、豊かな人生とは何かを学んでいく物語だと。本の紹介のコラムだったっけ。。最後にトルストイの「戦争と平和」から私が好きな一節。
誰もが世界を変えたいと思うが、誰も自分自身を変えようとは思わない。
(甲府山手通校 K.K先生)