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今読んでもおもしろい!謎多き『竹取物語』
2022年06月25日
みなさんは古典にどんな印象を持っているでしょうか。
「読みづらい」「堅苦しい」「何を言っているのか分からない」、
現代文とは違い、退屈でややこしい文章だと考えていませんか?
しかし今日はそんな印象を一掃する、楽しい古典の側面を代表的な作品とともにお話したいと思います。
「今は昔、竹取の翁といふもの有りけり…」このあまりにも有名な冒頭の書き出しは、みなさん古典の授業で一回は懸命に暗記した記憶があるのではないでしょうか。
竹取物語は現存最古の物語文であり、日本最古のSF作品であるといわれています。
現代のSF作品といえばシュタインズ・ゲート、Dr.STONE、攻殻機動隊、あとはドラえもん、といった未来の社会や宇宙などを舞台とする空想科学に富んだアニメが名を連ねています。
竹取物語がそれらと同じジャンルだと考えると少し親近感が沸くのではないでしょうか。
ではなぜ竹取物語がSF作品だといわれているのか。その根拠はかぐや姫の描写に由来しています。
物語文の祖である竹取物語。実は主人公のかぐや姫は月からやってきた宇宙人という設定で描かれたのではないか、という説があるのです。
まず一つ目の理由は、かぐや姫が育つ早さです。かぐや姫は翁夫婦のもとで育てられますが、翁と出会ったときは「三寸ばかり」およそ9㎝だった身長が約3ヵ月ほどで一人前の大きさとなります。たった3か月で成人を迎えるほどに成長するのは確かに普通の人間では考えられませんよね。
また2つ目の理由は、かぐや姫と貴族たちとのやり取りでの不思議な出来事です。
かぐや姫は帝から誘いを受けますが、ただただ断り続け、思いが募った帝は不意をついてかぐや姫を連れ出そうとします。その時の場面なのですが…。
帝、「などかさあらむ。猶率ておはしまさむ」とて、神輿を寄せ給ふに、このかぐや姫、木と影になりぬ。はかなく、口惜しと思して、「げにただ人にはあらざりけり」とおぼして、「さらば御供には率ていかじ。もとの御かたちとなり給ひね。それを見てだに還りなむ」と仰せらるれば、かぐや姫もとのかたちになりぬ。
《現代語訳》帝は「どうしてそんなことがあろう。やはり連れて行こう」と神輿を屋敷に寄せた途端、かぐや姫はパッと幻となり消え失せてしまった。帝は「ああ、儚く消えてしまった。残念だ。このお方は本当にただの人ではなかったのだ」とお思いになった。「それならば無理にあなたを連れて行こうとはしません。どうか元のお姿に戻ってください。最後にせめてその姿を見て帰ります。」帝がそう仰ると、かぐや姫は再び姿を現した。
どうでしょうか。瞬時に身を隠した後、再び姿を現すことも普通の人間であれば不可能ですよね。
ただの人として描かれていないことが良くわかる場面です。
『竹取物語』は翁とかぐや姫との親子愛、貴族たちとの滑稽なやり取り、そして月に帰っていく際の悲哀と、一つの物語に様々な見所がぎゅっと詰まった作品です。
しかし、ただそれだけではなく、作者不評であることをはじめとする『竹取物語』の謎も読者を惹きつける魅力といえるでしょう。SF作品という見方も後世の人々が新たな解釈で物語を読み解こうとしたことから生まれた、と私は考えています。
みなさんも『竹取物語』に込められた《余白》を埋めるような想像をしてみてはいかがでしょうか。
古典も現代文と同じくとても楽しい文学です。
みなさんも勉強の息抜きに古典文学の背景を想像してみてはいかがでしょうか。
(山梨市駅前校 Y.O先生)