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入試で役立つ化学 酸化還元反応と酸化数

2022年02月05日

今回は酸化還元反応と酸化数について考えてみます。

 

酸素や水素のやり取りを中心とした定義

 

酸化還元は高校生にとっては理解しにくい分野のようで、酸化還元が得意な高校生は少ないように思います。

 

まず酸化還元とはどのような反応なのか。

 

歴史的には酸素のやり取りを中心に酸化還元が定義されていました。まさに文字通りの酸化還元です。

物質が酸素と化合したとき、その物質は酸化されたと言い、逆に、酸化物が酸素を失ったとき、その物質は還元されたと言います。

 

教科書に掲載されている例では、銅を空気中で加熱すると、酸化銅になる反応があります。銅が酸素と化合して酸化されています。

 

また、水素のやり取りを中心に酸化還元が定義することもできます。

 

物質が水素を失ったとき、その物質は酸化されたと言い、逆に、物質が水素と化合したとき、その物質は還元されたと言います。

 

電子のやり取りを中心とした定義

 

酸化還元反応というのは、酸塩基の中和反応などと同じく、さまざまな化学反応を分類したときの反応パターンの一つです。同じパターンに分類できる反応は、まとめて扱える方がいいわけです。

 

そこで、酸素や水素が関係しない反応でも同じパターンとみなせる反応は、酸化還元反応に分類するために、現在では電子のやり取りを中心に酸化還元が定義されています。

 

物質が電子を失ったときは酸化されたと言い、物質が電子を受け取ったときは還元されたと言います。

 

あとでもう少し詳細にみていきますが、この定義は先の酸素や水素のやり取りを中心とした定義とも矛盾しません。

 

先ほどの銅が酸素と化合して酸化銅ができる反応を詳しくみると、酸化銅は銅イオンと酸化物イオンのイオン結合でできた物質で、単体の銅が銅イオンに、単体の酸素が酸化物イオンに変化していることがわかります。

 

銅は電子を失って陽イオンになり、酸素は電子を受け取って陰イオンになっています。

 

つまり、銅は「酸化されて」、酸素は「還元されて」いるということができます。電子の受け渡しによる定義では、「酸化された」「還元された」ということがとても明瞭になっています。

 

上記のようにイオンになる物質の場合は、電子を失って陽イオンに、電子と受け取って陰イオンになるわけですから、電子のやり取りの様子はわかりやすいのです。

 

共有結合の物質の酸化数

 

では、イオンにならない共有結合の物質では電子の受け渡しをどのように考えればいいか。

そこで登場するのが酸化数です。

 

酸化数はイオン結合の物質でも共有結合の物質でも「酸化された」「還元された」を判断するための指標となります。電子のやり取りは細かく言うと物質の中の一つ一つの原子について起こるので、酸化数は原子ごとに決められます。

 

単独の原子の状態を基準(酸化数=0)にして、それより電子を失っている状態か、受け取っている状態かを数字で表します。つまり、2価の陽イオンであれば原子単独の状態より電子が2個少ないので+2となり、1価の陰イオンであれば-1となります。

 

電子をいくつ失ったか、電子をいくつ受け取ったかという、電子の個数にリンクしているわけです。

 

そこで、共有結合の物質の酸化数ですが、共有結合の場合、電気陰性度を用います。電気陰性度は共有電子対を引き付ける強さの度合いを数値で表しています。

 

共有結合で2つの原子が異なる場合は、共有電子対が電気陰性度の大きい原子の方に偏っています。(このことを極性といいました。)

共有結合では、電気陰性度の大きな原子が共有電子対を受け取り、電気陰性度の小さな原子は共有電子対を失ったとみなすことで、電子のやり取りを明らかにします。

例えば、水分子の場合、

 

O(酸素)とH(水素)の共有結合が2か所あり、電気陰性度の大きいO(酸素)原子が2つの共有電子対を受け取ったとみなし、電気陰性度の小さいH(水素)原子は共有電子対を失ったとみなすと、1つのO(酸素)原子の酸化数は-2、2つのH(水素)原子の酸化数はそれぞれ+1となります。

 

ほとんどの共有結合は非金属元素の間でなされるので、非金属元素の中で電気陰性度が2番目に大きい酸素はたいていの場合、共有電子対を受け取ることになるので、酸化数はー2となります。また非金属元素の中で電気陰性度が小さい水素はたいていの場合、共有電子対を失うことになるので、酸化数は+1となります。これが、化合物の中ではOは-2、Hは+1とするという算出方法の根拠になっています。

 

同じ原子の結合では共有電子対は偏りませんから、電子のやり取りはないとみなし、単体では原子の酸化数は0になります。

 

電気陰性度の数値を覚える必要はありませんが、傾向があります。

貴ガスを除いて、周期表の右上の元素が大きく、左下の元素が小さくなっています。一番大きいのはF(フッ素)、二番目がO(酸素)であることは覚えておきましょう。

 

高校生は酸化還元を学ぶときに、いきなり教科書にある酸化数の算出方法を覚えるように言われて、意味が分からないまま覚える生徒も多いようです。しかし、このような意味を持つことを理解したうえで、酸化数の算出方法を覚えてほしいと思います。

 

酸化数の算出方法は教科書にしっかり書かれているので今回は省きますが、失った電子の個数、または、受け取った電子の個数とリンクしているので、反応の前後で酸化数が増えていれば、「酸化された」、酸化数が減っていれば「還元された」ということになります。

 

酸化還元について考えるときに大切なこととして、物質が「酸化された」「還元された」というように受動態的な表現をしますが、こういう表現に早く慣れましょう。

 

また、電子を失う物質があれば電子を受け取る物質がありますから、酸化と還元は必ず同時に起こります。「酸化された」物質は相手を還元することになりますから、還元剤となり、「還元された」物質は相手を参加することになりますから、酸化剤になります。

 

さて、反応の前後でどの物質が酸化され、どの物質が還元されたかを調べるには、すべての原子ごとに反応前後の酸化数の変化を調べることになります。しかし、最初に調べたいのは、反応の前後に単体があるかどうかです。

 

単体があると必ず酸化数が変化していますので、酸化還元反応になります。単体があるかどうかを最初に調べましょう。

 

S(硫黄)やN(窒素)を含む物質の酸化数

 

その上で、慣れてくると酸化数が変化することが多い原子があることに気づきます。その中でも、ここではS(硫黄)とN(窒素)を取り上げてみます。

 

S(硫黄)とN(窒素)は酸化数が変化することが多く、酸化還元反応ではS(硫黄)とN(窒素)が含まれた物質がよく出てきますので、あらかじめ、取り得る酸化数を整理しておきましょう。

 

まずS(硫黄)です。

 

S(硫黄)は最外殻電子が6個なので、最低酸化数がー2で、最高酸化数は+6となります。

電子を3個以上受け取る状態にはなれず、電子を7個以上失う状態にもなれないからです。

 

物質としては、-2が硫化水素(H2S)、0は硫黄単体(S)、+4が二酸化硫黄(SO2)、+6が硫酸(H2SO4)です。

 

硫化水素(H2S)は最低酸化数のS原子を含むので、自身が還元されることはなく、自身は酸化され、還元剤となります。

硫酸(H2SO4)は最高酸化数のS原子を含むので、自身が酸化されることはなく、自身は還元され、酸化剤となります。

 

これらを覚えておいて、反応の前後にS(硫黄)があったら、酸化数を調べましょう。

 

次にN(窒素)です。

 

N(窒素)は最外殻電子が5個なので、最低酸化数がー3で、最高酸化数は+5となります。

電子を4個以上受け取る状態にはなれず、電子を6個以上失う状態にもなれないからです。

 

物質としては-3がアンモニア(NH3)、0が窒素単体(N2)、+2が一酸化窒素(NO)、+3が亜硝酸(HNO2)、+4が二酸化窒素(NO2)、+5が硝酸(HNO3)となります。

 

アンモニア(NH3)は最低酸化数のN原子を含むので、自身が還元されることはなく、自身は酸化され、還元剤となります。

硝酸(HNO3)は最高酸化数のN原子を含むので、自身が酸化されることはなく、自身は還元され、酸化剤となります。

 

これらを覚えておいて、反応の前後にN(窒素)があったら、酸化数を調べましょう。これで、「酸化された」物質と「還元された」物質の判別ができます。

 

酸化還元では、次に半反応式の作り方をマスターしましょう。そして、酸化還元反応の応用例としては、電池や電気分解などがあります。

 

機会があったらそれらも扱ってみたいと思います。

 

(甲府駅北口校 N.S先生)

 

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