
新着情報
新着・更新情報などをご案内します
入試で役立つ化学 アンモニアソーダ法について
2026年07月11日

今回はアンモニアソーダ法について書いておこうと思います。
前回の記事はこちら→(入試で役立つ化学 アボガドロ定数について)
アンモニアソーダ法
私たちの身の回りには、ガラス、洗剤など、炭酸ナトリウム(Na 2 CO 3 )を原料として作られている製品が数多くあります。炭酸ナトリウムは「ソーダ灰」とも呼ばれ、現代の化学工業を支える重要な物質です。この炭酸ナトリウムを大量かつ安価に製造する方法として開発されたのがアンモニアソーダ法(ソルベー法)です。
歴史的な背景
18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパではガラスや石けんの需要が急速に増加しました。しかし、当時の炭酸ナトリウムは海藻の灰や天然鉱物から得られており、生産量が限られていたため高価でした。19世紀初めにはルブラン法という製法が広く用いられるようになりましたが、この方法では大量の塩酸や硫化カルシウムが副産物として発生し、深刻な環境問題を引き起こしました。そこで、1861年にベルギーの化学者エルネスト・ソルベーが、原料を無駄なく利用でき、環境への負荷も小さいアンモニアソーダ法を開発しました。この方法は現在でも世界中で利用されており、化学工業の発展に大きく貢献しています。
4つの原料
アンモニアソーダ法では、主に次の4つの原料を使用します。
食塩(NaCl)石灰石(CaCO 3 )アンモニア(NH 3 )水(H 2 O)
このうち、アンモニアは反応の途中で回収され、繰り返し利用されることが、この製法の大きな特徴です。
化学反応の流れ
① 石灰石を熱分解する
まず、石灰石を強く加熱すると、生石灰と二酸化炭素が得られます。
CaCO 3 → CaO + CO 2
ここで発生した二酸化炭素は、後の反応で利用されます。
② 生石灰から水酸化カルシウムをつくる
生石灰に水を加えると、水酸化カルシウム(消石灰)ができます。
CaO + 2H 2 O → Ca(OH) 2
この水酸化カルシウムは、後でアンモニアを回収するために使われます。
③ 食塩水にアンモニアと二酸化炭素を通す
食塩水にアンモニアを溶かし、さらに二酸化炭素を吹き込むと、炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )が沈殿
します。
NaCl + NH 3 + CO 2 + H2O → NaHCO 3 + NH 4 Cl
炭酸水素ナトリウムは水に溶けにくいため、結晶として取り出すことができます。
④ 炭酸水素ナトリウムを加熱する
得られた炭酸水素ナトリウムを加熱すると、目的物である炭酸ナトリウムが得られます。
2NaHCO 3 → Na2CO 3 + CO 2 + H 2 O
ここで発生した二酸化炭素も再び工程に戻されます。
⑤ アンモニアを回収する
反応で生じた塩化アンモニウム(NH 4 Cl)に、水酸化カルシウムを加えるとアンモニアが再生されます。
NH 4 Cl +Ca(OH) 2 → CaCl 2 + NH 3 + H 2 O
回収されたアンモニアは、再び③の工程で利用されます。
アンモニアと二酸化炭素は循環利用されるため、全体として消費される原料は食塩と石灰石です。
NaCl + CaCO 3 → Na 2 CO 3 + CaCl 2
この式からも、アンモニアが触媒のような役割を果たしていることがわかります。
なぜ炭酸水素ナトリウムだけが沈殿するのか
アンモニアソーダ法が成功する最大の理由は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )が冷たい水にはあまり溶けないという性質を利用していることです。食塩水にアンモニアと二酸化炭素を通すと、炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムができます。しかし、この2種類の物質は水への溶けやすさ(溶解度)が大きく異なります。
炭酸水素ナトリウム:水に溶けにくい
塩化アンモニウム:水によく溶ける
そのため、炭酸水素ナトリウムだけが結晶として沈殿し、ろ過によって簡単に取り出すことができます。
一方、塩化アンモニウムは水溶液中に残ります。つまり、溶解度の違いが目的物だけを取り出す鍵となっているのです。
なお、実際の工業では食塩を高濃度に溶かした冷たい食塩水(飽和食塩水)を用いることで、炭酸水素ナトリウムはさらに溶けにくくなり、収率が高くなります。
アンモニアはなぜ「触媒のように」働くのか
アンモニアソーダ法では、アンモニアは途中の反応で使われますが、最後にはほとんど回収されて再利用されます。例えば、反応によって生じた塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを加えると、
2NH 4 Cl + Ca(OH) 2 → CaCl 2 + NH 3 + H 2 O
となり、アンモニアが再び得られます。そのため、工場では最初に少量のアンモニアを補充すれば、その後は何度も循環利用できます。ただし、アンモニアは触媒そのものではありません。触媒とは「反応の前後で化学的に変化せず、反応速度を変える物質」のことです。一方、アンモニアは途中で塩化アンモニウムに変化し、その後再びアンモニアに戻ります。つまり、一時的には別の物質になるため、厳密には触媒ではありません。しかし、全体の反応式ではアンモニアは消費されず、繰り返し利用されるため、「触媒のような役割を果たす」と説明されることがあります。このように、反応に関わる物質を回収して再利用するという考え方は、現在の環境に配慮した化学工業や資源循環型社会にもつながる重要な考え方です。
なぜ炭酸ナトリウムではなく、炭酸水素ナトリウムを一度取り出すのか
最終的に作りたい物質は炭酸ナトリウム(Na 2 CO 3 )です。それにもかかわらず、アンモニアソーダ法ではまず炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を作って取り出します。その理由は、炭酸水素ナトリウムは水に溶けにくいのに対し、炭酸ナトリウムは水によく溶けるからです。もし最初から炭酸ナトリウムができたとしても、水溶液中に溶けたままであるため、ろ過によって取り出すことができません。蒸発によって水を取り除くこともできますが、大量の熱エネルギーが必要となり、工業的には効率が悪くなります。一方、炭酸水素ナトリウムは冷たい水にはあまり溶けないため、反応が進むと白い結晶として沈殿します。この結晶だけをろ過によって簡単に回収し、その後で加熱すれば炭酸ナトリウムになります。さらに、このとき発生する二酸化炭素は再び反応工程で利用できるため、資源を無駄なく使うことができます。
つまり、アンモニアソーダ法では、
1.水に溶けにくい炭酸水素ナトリウムとして取り出す。
2.加熱して目的物である炭酸ナトリウムに変える。
という二段階にすることで、目的物を効率よく製造しているのです。このように、物質の溶解度の違いを利用して目的物を分離するという考え方は、化学工業で広く用いられている重要な技術です。
社会的な意義
アンモニアソーダ法には、次のような大きな意義があります。
・安価な原料(食塩・石灰石)から大量の炭酸ナトリウムを製造できる。
・アンモニアや二酸化炭素を工程内で繰り返し利用するため、資源の利用効率が高い。
・ルブラン法に比べて廃棄物が少なく、環境負荷を大きく減らした。
・ガラス、洗剤、紙、化学薬品などの大量生産を可能にし、近代化学工業の発展を支えた。
・「資源を循環利用する」という現在のグリーンケミストリー(環境に配慮した化学)の考え方を先取りした製法の一つといえる。
まとめ
アンモニアソーダ法は、単に炭酸ナトリウムを製造する方法ではありません。身近で安価な原料を利用し、アンモニアや二酸化炭素を循環利用することで、資源を有効活用しながら大量生産を実現した画期的な技術です。この製法の普及によってガラスや洗剤などが広く供給されるようになり、人々の生活は大きく向上しました。アンモニアソーダ法は、化学反応を巧みに組み合わせることで社会の課題を解決した代表例であり、現代の持続可能な化学工業にもつながる重要な技術として学ぶ価値があります。
(甲府駅北口校N.S先生)
夏期体験講習2026 受付中!
目標へぐっと近づくなら、この夏がチャンス!この夏の頑張りが、これからの自信と成長につながります。この春期体験講習は、初めてKATEKYOを利用される方限定の特別プランです。一人ひとり目標は違う!だからこそ、プロ教師による完全1対1指導で、「今」必要な力を一緒に伸ばしませんか。
※体験講習は教室の枠が埋まり次第終了します!お早めにお申し込みください。
詳細はこちら→夏期体験講習2026 受付中!


