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入試で役立つ化学 合金について
2023年04月15日
今回は合金について書いておこうと思います。
私事ですが、私は大学での専攻が金属工学でしたので、金属にはちょっとした思い入れがあります。
今でも印象的に記憶しているのは、大学生の時に合金を製作する実習があり、2種類の金属の粉末を混合し、焼結して合金を製作しました。一辺の長さが2センチくらいの正方形の合金のかたまりを作ったのですが、先輩のお話では、この合金は硬度が非常に高く、硬いので、簡単には切断できないというお話でした。もちろん手では変形できませんが、見るからにかなり硬そう合金でした。
今になっては、原料の2種類の金属が何だったか覚えていませんが、合金にすると原料の金属とは異なる性質をもった金属になり、工業的に有用なものが少なくないのです。
融解した金属に他の元素の単体を混合して凝固させたものを合金といいます。合金にすることによって、単体では得られない優れた特性を持った金属材料を得ることができます。
万年筆のペン先
高校生で万年筆を愛用している方はあまりいないと思いますので、万年筆と言われてもどんなものだろうとピンとこない方も多いかもしれません。万年筆にはとても長い歴史があって、万年筆のウンチクを書き始めるときりがないので、ここでは書きませんが、万年筆にはペン先と呼ばれる部分があって、そこによく使われているのは18金です。18金には金という名前がついていますが、実は純金(24金)ではなく合金です。75%が金で、銀や銅などが25%含まれている合金です。しかし、純金より18金の方が硬いので、傷がつきにくく、ペン先に使われているのです。
このように単体より有用な合金にすることによって私たちの日常生活は豊かになっているわけです。
覚えておきたい合金とその成分元素
高校の化学の教科書に記載されている合金を見てみましょう。以下の合金は、成分元素がどんな金属であるか覚えておきたいです。
「ジュラルミン」
アルミニウムに銅、マグネシウム、マンガンを含んだ合金です。アルミニウムの単体は軽いのですが、強度がそれほど大きくないので、ジュラルミンという合金にして、軽くて強度が大きい金属材料にして使われています。大きなところでは航空機の機体に、身近なところではアタッシュケースに使われています。
「はんだ」
金属の接合をするときに使われるのがはんだです。電子機器の基盤のはんだ付けの経験がある方もいるかもしれませんが、はんだは融点が低く、熱せられたはんだごてで簡単に溶けるため、金属の接合に使われています。
昔のはんだはスズと鉛の合金でした。しかし、鉛は廃棄されると環境への影響が大きいので、今では無鉛はんだという鉛を含まないはんだが使われています。成分元素はスズと銀、銅です。
「ステンレス鋼」
ステンレス鋼は誰でも知っている合金でしょう。ステンレス(STAINLESS)という名前の通り、さびにくい合金です。
スプーンやフォーク、キッチンのシンクなど日常生活の様々なところで使われていて、私たちの日常生活はステンレス鋼なしでは考えられないくらいですから、極めて有用な合金です。鉄にクロムやニッケルなどを加えた合金で、クロムの酸化被膜が表面を覆うことで腐食が起こりにくい性質を持っています。
「青銅(ブロンズ)」
青銅はブロンズとも呼ばれていて、世界史の教科書には青銅器として登場するほど、長い歴史を持っています。鋳造(金属を溶かして金型に流し込み成形すること)が容易で、硬い特徴があります。青銅は、銅とスズの合金です。
銅像は青銅でできている場合が多く、銅像の表面が緑色をしているのは、銅のさびである緑青(ろくしょう)が付着しています。10円硬貨は青銅です。(ちなみに、銅の含有率が高いので茶色をしています。)
「黄銅(真ちゅう)」
黄銅は真ちゅうとも呼ばれていて、青銅とともに長い歴史があります。ブラスバンドの金色をした管楽器は黄銅でできています。ブラスというのは黄銅のことです。黄銅は銅と亜鉛の合金です。黄銅は加工がしやすく、美しい光沢があります。5円硬貨は黄銅です。
また、教科書には記載がありませんが、白銅という合金もあって、500円や100円、50円硬貨は白銅が使われています。銅とニッケルの合金です。
「ニクロム」
この合金は電気抵抗が適度に大きいため、電熱線に使われています。ニクロム線といい、電気に関する実験で使用したことがある方も多いでしょう。ニッケルとクロムの合金です。
「形状記憶合金」
画期的な特性を持った合金として、形状記憶合金があります。形状記憶という名前の通り、熱を加えて、一定以上の温度になると元の形にもどる性質を持っています。
代表的なものは、ニッケルとチタンの合金ですが、そのほかにも多くの種類があります。
元の形にもどるという性質を利用して、機械工学分野から医療分野まで幅広い応用例があります。
「水素吸蔵合金」
燃料電池は環境に配慮したこれからのエネルギー源として実用化がすすめられていますが、燃料に水素が必要です。水素は常温で気体であるので、高圧で圧縮したり、低温で液化したりしなければならず、貯蔵や運搬に難点があります。
こうした課題を解決する一つの方法が水素吸蔵合金です。金属の結晶格子のすき間に水素を吸収して、貯蔵でき、必要な時に取り出すことができます。
最後にめっきについて見ておきましょう。
めっきは金属の表面に別の金属をコーティングすることで、合金とは違いますが、めっきも試験では問われやすいです。教科書では2種類のめっきが紹介されています。ブリキとトタンです。ブリキは鉄にスズをコーティングしたもので、トタンは鉄に亜鉛をコーティングしたものです。それぞれの性質によって用途が違ってくるので注意しましょう。
いずれも鉄の腐食を防止するためにスズや亜鉛をコーティングするのですが、イオン化傾向は、亜鉛>鉄>スズの順で、イオン化傾向が小さい金属の方が酸化・腐食されにくいです。
ブリキは鉄より酸化されにくいスズをコーティングしていますが、傷がつくと鉄が露出してそこから酸化が始まります。よって、傷がつきにくい室内での用途に適しています。
反対に、トタンは鉄より酸化しやすい亜鉛をコーティングしていますから、傷がつくと表面の亜鉛が溶けて傷口をふさぐ効果があります。よって、傷がつきやすい屋外での用途に適しています。
以上、合金について見てきましたが、
さらに詳しいことは高校の化学では扱われないので、上記の内容をしっかり覚えておきましょう。