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入試で役立つ化学 炭酸水素ナトリウムについて

2022年12月24日

大学入学共通テストまで残り1か月を切りました。

受験生の皆さんは、残された時間を有効に使って、ぜひ満足のいく結果を出してください。

 

 

ところで、2022年もあと数日となり、年末の大掃除の時期になりました。

受験生は大掃除どころではないかもしれませんが、わが家の洗面台の棚に「重曹」を見つけました。

 

パッケージの裏を見ると、原材料名に「炭酸水素ナトリウム」とあります。

そうです。化学基礎や化学の教科書によく登場する「炭酸水素ナトリウム」です。

 

 

現代を生きる私たちの日常生活に化学物質は欠かせません。

化学物質が私たちの生活を豊かにしてくれています。

 

炭酸水素ナトリウムは弱酸の塩

今回取り上げるのは「炭酸水素ナトリウム」です。

高校の化学を学んでいると、いろいろなところで登場しますので、誰でもこの名前を知っているでしょう。

炭酸水素ナトリウムNa2HCO3は、白色の粉末で、「重炭酸ソーダ」または「重曹」とも呼ばれています。

 

炭酸水素ナトリウムは、弱酸である炭酸H2CO3と強塩基である水酸化ナトリウムNaOHが中和するときにできる塩、

すなわち、炭酸のナトリウム塩です。

 

弱酸と強塩基の中和点は弱塩基性ですから、炭酸水素ナトリウムの水溶液は弱塩基性を示します。

 

炭酸水素ナトリウムの水溶液が弱塩基性であることを、加水分解を使って説明すると、以下のようになります。

 

炭酸水素ナトリウムの水溶液は、炭酸水素イオンHCO3とナトリウムイオンNa+を含んでいますが、炭酸水素イオンは電離度の小さい弱酸である炭酸が電離して生じたイオンですから、その一部が水から水素イオンH+を奪って、炭酸に戻るように変化します。

 

その結果、水酸化物イオンOHが生じて、水溶液は弱塩基性になります。

この反応を加水分解といいます。

 

炭酸水素ナトリウムは、水溶液が弱塩基性であることを利用して、胃酸過多症を中和する胃腸薬として使われています。

 

炭酸水素ナトリウムの熱分解

炭酸水素ナトリウムは加熱すると分解して、炭酸ナトリウムNa2CO3と水H2Oと二酸化炭素CO2に分解します。

この反応は中学の教科書にも登場しています。

 

実験方法としては、試験管に入れた炭酸水素ナトリウムの粉末をバーナーで加熱します。

試験管には白色の固体(炭酸ナトリウム)が残り、試験管の口に水滴ができます。

 

この水滴が試験管の底部に逆流すると試験管が割れることがあり危険なので、水滴が逆流しないように試験管の口を少し下に向けます。

 

また、発生した気体が石灰水を白濁させることで、この気体が二酸化炭素であることを確認します。

ちなみに、石灰水とは水酸化カルシウムCa(OH)2水溶液のことです。

 

このように、気体(二酸化炭素)が発生することを利用して、ペーキングパウダーの成分としても使われています。

 

アンモニアソーダ法の中間生成物

次にアンモニアソーダ法に触れておきたいと思います。

アンモニアソーダ法は塩化ナトリウムNaClの飽和水溶液と二酸化炭素CO2とアンモニアNH3を原料として、炭酸ナトリウムを製造する工業的製法ですが、中間生成物として炭酸水素ナトリウムを生成します。

 

アンモニアソーダ法の主要な反応の流れは、塩化ナトリウムの飽和水溶液に二酸化炭素とアンモニアを加えると、溶解度の小さい炭酸水素ナトリウムが沈殿し、これを加熱分解して炭酸ナトリウムを作っています。

 

この過程で生成した二酸化炭素とアンモニアを再利用するのが特徴です。

 

アンモニアソーダ法はここに挙げた物質以外にもいくつかの物質が登場しますが、詳細はまた別に機会に書きたいと思います。

 

二段階中和のしくみ

二段階中和については、記述のない教科書もありますが、難関大の入試ではよく出題されています。ですから、しっかり理解しておいた方がいいでしょう。

 

この二段階中和に登場する物質が炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムです。

二価の弱酸の塩であれば強酸を加えていったときに、二段階中和という現象が起こりますが、入試問題として出題されるのは、炭酸ナトリウムがほとんどです。

 

他の二価の弱酸でも同じしくみなので、応用してください。

 

 

炭酸ナトリウムの水溶液は塩基性なので、これを塩酸HClで中和します。

塩酸を滴下して、炭酸ナトリウムの水溶液の炭酸イオンのほとんどが炭酸水素イオンに変化したところが第一中和点になります。

 

第一中和点は炭酸水素ナトリウムの水溶液と同じ状態で、弱塩基性ですから、フェノールフタレインを指示薬として中和点を見つけることができます。

 

そして、さらに塩酸を加えていくと、炭酸水素イオンのほとんどが炭酸に変化したところが第二中和点となります。

第二中和点は炭酸水と同じ状態で、弱酸性ですから、メチルオレンジを指示薬として中和点を見つけることができます。

 

 

このような現象が起こるのは、弱酸である炭酸の第一電離の電離定数に比べて、第二電離の電離定数が非常に小さいことが原因です。

 

炭酸から炭酸水素イオンができるのが第一電離、炭酸水素イオンから炭酸イオンができるのが第二電離ですが、そもそも弱酸である炭酸が電離して炭酸水素イオンが生じる割合も少ないのですが、2つの電離定数の差がとても大きいために、

 

炭酸水素イオンから炭酸イオンが生じる割合は極めて少なくなります。

 

このため第一段階として、塩酸から生じる水素イオンが炭酸イオンと反応し、その反応がほとんど終わった後に、第二段階として塩酸から生じる水素イオンが炭酸水素イオンと反応することになります。

 

ですから純度100パーセントの炭酸ナトリウムでは、第一中和点までの塩酸の体積と第二中和点までの塩酸の体積は等しくなります。

 

有機化合物の分離の試薬として

芳香族化合物の分離のときの試薬として炭酸水素ナトリウムが使われます。

 

これは水に溶けにくい芳香族化合物をジエチルエーテルなどの有機溶媒に溶かし、そこに酸や塩基の水溶液を加えてよく振り交ぜ、しばらく静置すると、酸や塩基と反応した芳香族化合物は水層に溶け込むため、分離できます。

 

抽出という分離方法で、分液ろうとという実験器具を使用します。

 

高校の化学で扱う芳香族化合物で酸性の物質は、主に芳香族カルボン酸とフェノール類ですが、炭酸水素ナトリウムを使用すると、芳香族カルボン酸とフェノール類を分離できます。

 

これは酸の強さに関係しています。

 

有機化合物の酸の強さは、強い順に、スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類となります。

 

芳香族カルボン酸とフェノール類を溶かしたエーテル溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると、炭酸より強い芳香族カルボン酸と炭酸水素ナトリウムとで弱酸の遊離反応が起こり、芳香族カルボン酸が塩となって、水槽に溶け込みます。

 

しかし、炭酸より弱いフェノール類は反応しないので、エーテル層の残ったままとなり分離できます。

 

今回は炭酸水素ナトリウムについていろいろみてきました。しっかり理解して入試に臨みましょう。

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