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梶井基次郎「檸檬」解説

2022年11月05日

「桜の樹の下には屍体が埋まっている」

このフレーズを耳にしたことはありますか?

アニメ、ドラマ、そして都市伝説的に語り継がれている有名な文言ですね。

この言葉は「檸檬」の作者、梶井基次郎が執筆した短編小説のタイトルです。みなさんは国語の教科書で初めて梶井基次郎の名前を知ったと思いますが、彼の「桜の樹の…」という言葉だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。

今回は現代国語の授業において必ずと言っていいほど扱われる「檸檬」について少し解説していきたいと思います。

 

  1. 「得体のしれない不吉な魂」とは…

この作品は本当に難解です。何度読み返しても何が書いてあるか分からない、といった感想を持つ人は少なくありません。その中でも一番のネックになるのが、「得体の知れない不吉な塊」という表現です。それがいったい何のことであるのか、作品中にはもちろん書いてありません。

 

ですが、作者の梶井がこの檸檬という小説を仕上げたのが大学生くらいの頃、と考えれば、この迷いはこの年代で当然のことなのではないのでしょうか。

主人公の「私」は若者です。若い時期の心情は複雑です。憂鬱になったり滅入ったりするのは日常茶飯事。将来の事、今のこと、人との関わりがどんどん変化していく日常に、不安や期待に心を揺さぶられるのは当たり前のことですよね。 

その気持ちをはっきりと言葉に表し、自分で解釈する、というのは不可能なのではないでしょうか。自分の心を抑えているモヤモヤとしたものが何なのか、自分にはわからないのかもしれません。

 

  1. なぜ「檸檬」なのか…

この作品で何と言ってもインパクトがあるのが檸檬。よく他の果物だったら?他の色だったら?なんて仮定したりする感想がありますが、他の果物や色ではこんなにもインパクトがなかったような気がします。

 

人間の心情に沿うと、鮮やかな黄色は、明るさ、軽さ、若さ、興奮などの意味を表すそうです。 言葉の表現においても黄色い声援という言い回しがありますが、声援に色がついているわけではないのに、この言葉から歓声が伝わってくる感覚がありますよね。

反面、黄色は、危険、緊張という意味あいも含んでいます。

黄色が持つ意味、どちらにしてもインパクトのある色として捉えてよいと思います。 

 

さらに檸檬という果物自体が持っているエネルギーも感じられると思います。檸檬を齧ってしみじみとおいしいと味わう人はなかなかいません。檸檬の持つ独特の迫力が存在感を与えているのではないでしょうか。

 

【「檸檬」における作者のメッセージ】

国語の授業で「作者はこの作品を通して、読者に何を伝えたかったのか」という問いがよくあります。

しかし「檸檬」においては、読者へのメッセージや教訓のようなものは含まれていないように感じます。

自論ですが「檸檬」は作者が純粋に美しいと思ったもの、儚いと感じたこと、自分を取り巻く状況をありのままに描写しようとした作品なのだと思います。

 

一編のごく短い小説でありながら、詩的な美しさを読者に印象付ける言語センスと表現力。これこそ「檸檬」の真骨頂なのではないでしょうか。

ぜひ今一度、主人公の「私」と「檸檬」の織り成す非現実、非日常を味わってみませんか。

参考文献 梶井基次郎 「檸檬、ある心の風景」 旺文社文庫

 

山梨市駅前校 Y.O先生

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