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推し活が世界を変える?社会を動かす究極のファン集団「ファンダム」

2024年06月05日

あなたに「推し」はいますか?

今やあちこちで聞くようになった「推し」という言葉。今回は、この「推し」を応援するファンの力が集結し、社会を動かす力を持ち始めた現象についてご紹介します。

 

「推し」は、アイドルや俳優、アニメキャラクターなどの同種の中で一番好きという意味で使われます。「推し」を持つ人にとって「推し」は、生きがいや希望、元気の源、夢や憧れなど、ポジティブな印象を与える存在であり、パワーや癒しをもたらしてくれる存在とされています。「推し」を応援する活動のことを「推し活」といい、ライブやコンサートへの参加、推しのグッズの購入、作品の鑑賞などの「推し」を直接応援する活動だけでなく、聖地巡礼、SNSで情報発信ほか、「推し活」の方法は様々な形に広がっています。

 

いま、この「推し活」はアーティスト本人やその作品以外にも大きなインパクトを及ぼす力を持ち始めており、海外では、社会に影響力を持つ強力なファンの集団を「ファンダム」と呼び、注目を集めています。

「ファンダム」とは?

ファンダムとはファンの最強集団のことで、その活動により世界的ヒットを次々と生み出しています。韓国出身のアーティストBTSがアメリカの「ビルボード・ミュージック・アワード」を連続で受賞したのも、漫画「ワンピース」が全世界で5億部以上発行され、ネットフリックスで実写ドラマ化されたのも、ファンダムの力が大きく影響しています。

BTSを世界的スターにした「ファンダム」

ファンダムが世界で注目されたきっかけのひとつになったのは、BTSのファン集団「ARMY」の活動です。BTSは当時まだ小さかった韓国の事務所から、世界的スターへと上り詰め、いまや「21世紀のポップアイコン」とも評される7人組です。グラミー賞ノミネートや、国連でのスピーチなどで有名ですね。

BTSを世界的スターに押し上げたARMYのアクション

では、ARMYはBTSをどのようにして世界的スターに押し上げたのでしょうか。ARMYが仕掛けた3つのアクションをご紹介します。

 

①「ファンサブ」

初期のコアなファンたちは、まずSNSに目をつけ、BTSの魅力を世界に発信しようと、無償で動き始めました。ファン自身がBTSの曲の歌詞を世界各国の言葉に翻訳、動画に字幕をつけて、SNSで拡散していくことで、瞬く間にBTSのメッセージは世界60か国に届き、ARMYの急拡大に繋がりました。

 

②「スミン」

ストリーミング再生の略です。ARMYはBTSが新曲を発表すると、昼夜を問わず楽曲やミュージックビデオを、YouTubeなどのSNS上で再生しまくります。再生回数が増えれば世間での注目度も上がり、TVなどの露出も増えて、必然的に知名度が上がるというわけです。ちなみに2021年5月に公開された「Butter」は、世界中のARMYが「スミン」を仕掛け、24時間で1億820万回も再生され、世界記録となりました。

 

③「応援広告」

SNSを通じて集まったファンが共同で出資し、メンバーの写真などを街中に掲載する活動です。メンバーの誕生日には、世界で最も高額といわれるニューヨークのタイムズスクエアにも掲載されて話題になりました。こうしたSNSを使った活動によって、ARMYの数は今や6000万人規模とまで推定されるほどになりました。そしてこのファンダムの力が、BTSを世界的なスターに押し上げていったとも言えるのです。

 

「推し」の魅力を世界に広げる力を持つようになったファンダム。その力はエンタメ業界以外にも広がっています。

社会問題もファンダムが解決!?

世界規模のファンダムは「国際的な社会課題を解決できないか」という壮大な目的で動くこともあるそうです。例えばARMYは、BTSが黒人差別撤廃を求めるBLM運動に100万ドル寄付した際には、SNSで呼びかけそれを上回る額を寄付し、差別のない社会実現の動きに貢献しています。

 

さらに、社会活動を目的としたファンダムもあります。ハリー・ポッターのファンダム「ファンダム・フォワー」の目標は、ハリー・ポッターの世界にある高い倫理と理想を広めることにあり、はじめから社会活動を前提とした団体として結成されました。具体的にはアフリカでの児童労働問題の解決や、アメリカにおける移民差別の解消などのために活動しています。キャンペーンには「ダンブルドア軍団の反撃」というように、キャラクター名を使っています。

政治にもファンダムの影響が!?

ファンダムは政治の世界にまで影響を及ぼそうとしています。よく知られているのが、テイラー・スウィフトのファンダム「スウィフティーズ」です。

 

テイラーが2023年9月のアメリカ大統領選の中間投票に向けて、2億7000万人ものフォロワーがいるインスタグラムに「選挙のための登録はもう済ませた?」と投稿しました。するとスウィフティーズが動き、投票に必要な有権者登録を行うサイトにアクセスが集中したのです。3万5千人以上も新規登録があり、その大半が新成人になったばかりの若者だったそうです。また2020年にも、テイラーはトランプ元大統領を非難する文章を投稿し、わずか5時間で100万いいねを記録しています。こうした状況から、彼女の政治的立場を支持する多くのスウィフターズによって、政局が動くかもしれないと言われています。

ファンダムには危険性も!

 “好き”という感情がつなぐ、新しい関係性“ファンダム”。人づきあいが希薄になった現代の救世主のようにも見えますが、問題も指摘されています。世界的なファンダム研究の権威であるヘンリー・ジェンキンズ教授は「人々を特定の考えに押し込めて社会的な分断を加速させる危険性がある」と語っています。特定の人物やコンテンツを好きになったファンダムは、その対象しか信じなくなり、異なった考えをもつ人や、他のファンダムを否定してしまうかもしれないのです。

 

例えば2018年にはこんな事件が起こりました。大人気SF映画「スター・ウォーズ」(2017年公開)が公開されると、その内容に不満を抱いだいた一部のファンが、「こんなの違う!」と、キャストや監督をSNSで攻撃したのです。その内容は映画とは全く関係のない、人種差別や性差別などにまで及び、なかには殺害予告まであったそうです。こうした排他的なものは「トキシック・ファンダム」とも呼ばれ、社会の分断を生む可能性があると言われています。

 

SNSの発達によって、文化、経済、社会、政治とあらゆる分野で影響力を持つようになった最強の集団、ファンダム。人間誰しもが抱く“好き”という感覚がつなぐ新時代の連帯は、人をまとめることができる一方で、人を分断する恐れもあるのです。

 

本来、「推しを応援したい!」というプラスの感情から発した行動であり、仲間だったはずのファンダム。「推し」への想いが高まるあまり、そのエネルギーが誰かを傷つけていないか、ときどき立ち止まって考えることも大切かもしれませんね。

 

参考:NHK「漫画家イエナガの複雑社会を超定義」

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