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障害があってもなくても、ともに学ぶ【インクルーシブ教育】とは?

2024年05月01日

 

障害があってもなくても、すべての子どもがともに学び合う教育のことを「インクルーシブ教育」といいます。2006年、国連で採択された「障害者権利条約」で世界がこの取り組みを行うことを宣言。日本も2014年に同意しました。ところが、2022年9月、国連は、日本がインクルーシブ教育をできていないとして、勧告を出しました。

 

日本では文部科学省によってインクルーシブ教育の実現・普及が進められ、まずは特別支援教育の発展が欠かせないとされていますが、障害者権利条約が目指すインクルーシブ教育は、「誰もが同じ学校・教室で多様な学び方を保証されていく教育」なのです。

なぜ、いまインクルーシブ教育が注目されているのか

インクルーシブ教育が注目されている理由のひとつに、SDGs(持続可能な開発目標)があります。

 

昨今、気候変動だけでなく、感染症の蔓延(まんえん)など、国境を越えたグローバルな課題が増えてきました。そのため、各国が単独で解決できる問題ではなくなり、日本でも学校現場でSDGsを掲げるところが見られるようになってきています。

 

SDGsとは、2015年の国連総会で、全会一致で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書の一部です。この文書には17の目標が掲げられており、それらの根底にはSDGsの「誰一人取り残さない」「最も遅れているところに第一に手を伸ばす」という原則があります。

 

これは言い換えれば、17の目標すべての解決には、すべての子どもたちを包み込むのと同時に、これまでサポートされてこなかった人たち(子ども、若者、障害のある人、高齢者、難民、移民など)を支援することが必要、ということです。そこで、誰もが安心して過ごせる環境づくりを進めるインクルーシブ教育が注目され始めたのです。

 

例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての人たちが質の高い教育を受けられるような環境をつくることを目指す目標です。知的障害や発達障害、性的少数者、貧困家庭、片親家庭、外国籍などの子どもたちも当然ながら例外ではないため、インクルーシブ教育の観点が不可欠となります。

50年前から続いている公立小学校のインクルーシブ教育

大阪府豊中市立南桜塚小学校は、50年前からインクルーシブ教育を実践し、視覚障害、ダウン症、医療的ケアが必要なこどもも、みんな一緒に学んでいます。

 

医療的ケアが必要な子どもには看護師が、外国籍の両親を持つ子供には通訳が付き、視覚障害のある子どもには支援学級の教員がサポートを行っています。授業は担任一人が行うのではなく、支援学級の教員も含めて複数人の教員で進行にあたり、力を合わせてクラスを運営しています。

 

運動会などの行事では、各クラスがそれぞれのクラスメイトの持つ障害などの特性を踏まえ「障害を持つ子が一緒に楽しむにはどうすればよいのか」を子どもたちが考え、それぞれのクラスにあった工夫をすることで、みんなで楽しむことができました。

 

障害があってもなくても、みんなで一緒に過ごし、さまざまな課題にも取り組むことで、

相手の立場を思いやる気持ちや課題を解決していく力が育まれていくのですね。

 

支援学級の教員は「同年代の子どもたちがともに過ごすことで、そこでしか成し得ない経験や関係性を築いていくことができ、そのような環境を提供することは地域の学校の役割でもある」と話しています。

 

教育現場だけでなく、博物館や美術館でもインクルーシブな展示に力を入れている施設があります。

博物館・美術館でのインクルーシブな取り組み
徳島県立博物館

2021年8月にリニューアルした徳島県立博物館は「開かれた博物館」、「だれもがつどえ、楽しく学べる博物館」の実現のため、催しものをはじめとする様々な普及教育活動を行っています。

 

館長の長谷川賢二さんは、以前、ほかの博物館をリニューアルした際に国のガイドラインだけに基づいて展示の設計を行ったところ、障害を持つ当事者から「見にくい」という声が上がってきたため、この博物館をリニューアルする際には展示内容や見せ方を設計する段階から当事者の意見を取り入れて博物館のリニューアルを行いました。

 

工夫1 車いすで見やすい高さ・形状のディスプレイを設置

工夫2 視覚に障害のある人でもイメージしやすいように、触れる化石だけでなく、生きている姿を復元したレリーフを追加し、どんな生き物だったのかをイメージしやすくした

工夫3 無料のアプリで学芸員の解説動画を手話付きで見ることができる

国立民族学博物館

大阪の国立民族学博物館では、知的障害者向けのワークショップが年に4回開催されています。座学だけでなく、博物館の展示を巡るクイズラリーなど参加型の企画も多く開催されています。ワークショップの主催者は「博物館はそもそも生涯学習の場であるので、知的障害のある人の学びへの意欲もすくい取って、学びの機会を提供することは大事だと考えています」と話しています。

 

<ポイント>

国連の障害者権利条約では、「教育制度及び生涯学習を確保する」(第24条より)という権利が明記されています。

滋賀県立美術館

滋賀県立美術館では、障害を持つ人の見方を取り入れた企画展が行われました。車いすユーザーの目線にあわせた高さの展示や、視覚障害者が体感できるように上に寝そべる形状の彫刻の展示、また、絵画の脇に通常の絵の解説ではなく、知的障害者が感じた絵の見方が書かれたコメントが掲示されました。展覧会を企画した担当者は「マイノリティの視点を展示に取り入れることで、多様な見方を楽しんでほしい」と話しています。

 

以上、今回は学校でのインクルーシブ教育や博物館・美術館でのインクルーシブな取り組みについてご紹介してきました。インクルーシブとは、障害を持つ人だけが対象ではありません。人はそれぞれいろいろな事情を抱えています。いろいろな人たちがお互いを尊重し、よいところを高め合い、助け合ってこそ、「持続可能な社会」になるのだと思います。まずは、あなたのまわりの困っている人を助けたり、考えの違う人の意見を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

参考:SDGsACTION

   NHK「バリバラ」

 

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