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ビッグデータで精度向上!「天気予報」の仕組みとは?
2023年06月14日
以前は、朝晩にテレビでチェックすることが当たり前だった天気予報ですが、現在はスマホでほぼリアルタイムに近い予測ができるようになっています。では、この天気予報はどのように作成されているか知っていますか?今回は、天気予報の仕組みと最新技術についてご紹介します。
一般的に私たちが天気予報と呼んでいるものは、正式には「府県天気予報」といいます。「府県予報区」を地域ごとに細分し、各地域の天気の予報を、毎日5時、11時、17時に発表します。また、天気が急変したときには随時修正して発表します。発表内容は、今日・明日・明後日の天気と風と波、明日までの6時間ごとの降水確率と最高・最低気温の予想です。
私たちが目にする天気予報は、下記のような手順で作られています。日本全国にある観測所や気象レーダー、衛生などが収集した気象データをスーパーコンピュータが解析し、それをもとに気象予報士が天気予報や警報を作成・発表しています。
引用元:気象庁
上の図にある「客観解析」とは、精度の高い数値予報を行うために必要な作業で、不規則に分布した観測データから規則的な初期値を与える過程のことをいいます。最初に、地球大気や海洋・陸地を細かい格子に分割し、世界から送られてくる観測データに基づき、それぞれの格子にある時刻の気温・風などの気象要素や海面水温・地面温度などの値を割り当てます。世界中の地上観測、高層観測、衛星観測などのデータがリアルタイムで集信されて解析に利用されています。
つぎの段階にある「数値予報」とは、計算機(スーパーコンピュータ)を用いて地球大気や海洋・陸地の状態の変化を数値シミュレーションによって予測することをいいます。「客観解析」で収集・解析したデータをもとに、物理学や化学の法則に基づいてそれぞれの値の時間変化を計算することで「将来」の状態を予測します。この計算に用いるコンピュータープログラムを「数値予報モデル」と呼んでいます。
数値予報による予測結果は、民間気象会社や報道機関に提供されているほか、外国の気象機関でも利用され、天気予報・警報等の発表、航空機や船舶の安全運航など、様々な分野で活用されています。
天気予報の基になる気象データは、主に4つの方法で集められています。
1.地上気象観測
全国約150か所の気象官署(気象台や測候所)では、気温や降水量などの観測を行っており、そのほとんどが自動化されています。観測データは決められた時間に国内外にリアルタイムに伝えられ、天気予報や気候変動の監視等に利用されています。
<地上気象観測の観測要素>
気温、降水量、日照時間、風向、風速、積雪・降雪の深さ、気圧、湿度(相対湿度)、日射量、視程、大気現象(雷・霧など)、天気、雲の形や量
2.アメダスによる気象観測
アメダスは地域気象観測システム(AMeDAS: Automated Meteorological Data Acquisition System)の略で、全国約1300カ所(約17キロメートル四方に1カ所)で雨量を自動的に観測し、このうち約840カ所(約21キロメートル四方に1カ所)では気温、風向・風速、日照時間などを自動的に観測して気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしています。
3.気象レーダーによる気象観測
気象庁は1954年に気象レーダーの運用を開始し、現在、全国に20か所設置しています。気象レーダーでは、電波を使って雨や雪の降り方の強さの分布、移動などを広い範囲で連続的に観測しています。さらに、気象レーダーで観測したデータと、アメダスで直接観測した雨量等を組み合わせることにより、正確できめ細かな雨量の分布(解析雨量)を作成しています。気象レーダーで観測した日本全国の雨の強さの分布は、リアルタイムの防災情報として活用されるだけでなく、降水短時間予報や降水ナウキャストといった予報の作成にも利用されています。
4.衛星による観測
気象観測を行う静止気象衛星は、赤道上空約3万6千キロメートルにあり、日本付近を含むアジア東部、オセアニア、西太平洋地域の雲の動きなどを観測しています。テレビの天気予報などでもおなじみの雲の分布状況のほか、雲の高さ、上空の風の状況、海面の水温の分布などを観測しており、特に観測データが乏しい洋上における台風や低気圧などの動きをつかむための重要な手段となっています。
このように、私たちが日頃目にする天気予報は、様々な方法であらゆる確度から集められたデータを分析して作られています。
降水の有無の予報精度(以下、適中率と記述)は、スーパーコンピュータによる数値予報の進歩により、この20年で大きく向上しました。1980年代後半は80%前半だった的中率が、2022年には90%に迫る勢いで上昇しています。
引用元:気象庁
しかし、短時間で急激に発達する積乱雲に伴う局地的な大雨を、時間と場所を特定してピンポイントで予測することはまだ難しく、より精密で高分解能な数値予報モデルの開発が進められています。
一方、数値予報の適用範囲は天気予報から様々な分野に広がり、大気汚染物質や火山灰の移流拡散予測、オゾンや二酸化炭素といった大気微量成分の生成・消滅を考慮した分布予測も行われています。また、海流や水温・塩分の変化を予測する海洋モデルも利用されています。これらの大気と海洋モデルを結合し、地球の将来の気候を予測する地球システムモデルの開発も進められています。
気象庁のWEBサイトでは、様々な産業界で積極的に活用してもらえるように、気象衛星やアメダスが収集した情報が提供されています。
近年、増加傾向にあるゲリラ豪雨などの異常気象による自然災害へ備える意味でも、天気予報の重要性が今後ますます高まっていきそうですね。
参考/気象庁