KATEKYO知恵袋
朝起きられないのは病気のせい?小中学生に多い「起立性調整障害」
2023年05月24日
新学期がはじまってしばらく経ち、子どもたちが新しい環境での学校生活に慣れてきたこの時期“朝、子どもがなかなか起き上がれない日がある”ということはありませんか?
実はその症状は、起立性調節障害(OD)という病気の一種かもしれません。
起立性調節障害とは、立ちくらみやめまい、倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などの症状を伴う自律神経機能不全の一つです。主に思春期(10~16歳頃)に多く見られる症状で、中学生の1割が発症するといわれています。そこで今回はこの起立性調節障害について、症状や改善方法などを詳しくご紹介します。
起立性調節障害は自律神経の問題といわれています。思春期は自律神経のバランスが崩れやすいので症状が出やすく、小学生の約5%、中学生の約10%の児童・生徒が起立性調節障害といわれています(100万人程度)。起立性調節障害といわれる児童・生徒の約半数が不登校状態となっていて、不登校になっている子どものうち、3割から4割はこの病気だといわれています。
起立性調節障害によくある症状として、立ちくらみやめまい、倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などがあります。これは、起きたときに脳への血流が低下することによって起こるもので、午後になるとよくなることが多いため“学校を休みたくて仮病を使っているのでは?”“ただの怠けでは?”と周囲に誤解されやすく、病気だと認識がされにくいことが、この病気の診断や治療が遅れる原因のひとつにあります。
予後は適切な治療を受けた場合、軽症では数ヶ月で軽快することが多く、中等症では1年後に50%、2~3年後に80%が軽快し、不登校などを伴う重症の場合でも個人の体調や環境に合った学校に進学した場合2~3年で90%が軽快するといわれています。
<起立性調整障害チェック>
□立ちくらみ、めまいを起こしやすい
□立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
□入浴時や、嫌なこと見聞きすると気持ちが悪くなる
□少し動くと動悸、または息切れがする
□朝なかなか起きられず、午前中の調子が悪い
□顔色が青白い
□食欲不振
□ときどき腹痛がある
□体のだるさ、疲れを感じやすい
□頭痛がある
□乗り物に酔いやすい
上の項目をチェックし、子どもの起立性調節障害が疑われるようでしたら、まずは小児科や耳鼻科を受診しましょう。寝た状態と立ち上がった状態で血圧と脈拍の数値を測り、診断します。
起立性調節障害は「心身症」とも呼ばれ、ストレスや心の問題が発症や症状の悪化に大きく影響します。患者と家族が病気について理解し、治療について考え、寄り添うことが重要です。治療は生活習慣の改善が基本です。
<起立性調節障害の改善方法>
病気を理解する
規則正しい生活…昼ごろでもいいので無理なく起きられる時間を決めて、毎日その時間に起きる
適度な運動…体調がよいときに散歩をするなど、少しでも体を動かす
食事…貧血を防ぐため、塩分と水分を多くとる
心理的ストレスを減らす
症状に合った薬の服用
体調が悪く体が思うように動かないときは無理をせず、できることからはじめましょう。好きなことに没頭することで症状が和らぐ場合もあります。
起立性調節障害という病気はまだあまり知られていないため、長期間学校を休む事情を学校に理解してもらうのが難しい場合があります。そんなときは、医師の診断書を提出してください。きちんとした診断名がつくことで、学校に体調を理解してもらいやすくなります。
以上、今回は、思春期に多く発症する「起立性調節障害」についてご紹介しました。大人でも寝不足のときや疲れがたまっているときは、朝起きるのがつらいですね。子どもが起きないときは、つい“早く起きなさい!”“遅刻するよ!”と怒りたくなりますが、そこには思春期特有の病気が隠れている可能性があることを心に留め、周りの大人が子どもの不調に気付けるように心掛けましょう。
<不登校に悩んだら>地域の相談窓口
静岡県教育委員会相談窓口
https://www.pref.shizuoka.jp/kodomokyoiku/school/kyoiku/1003777/1003765/index.html
山梨県 教育相談
https://www.pref.yamanashi.jp/tokushi-jiseishien/99421257921.html
参考:NHK健康チャンネル、こころのサイエンス