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エビやカニが食べられなくなるかも!「海洋酸性化」って知ってる?

2023年03月08日

二酸化炭素が地球上に増えすぎると温暖化が促進されることは、世の中に広く知られるようになりました。しかし、「海洋酸性化」といわれる海の二酸化炭素の増加が海の生き物にも影響を及ぼすことを知っていますか?

 

このまま二酸化炭素の増加に歯止めがかからなければ、エビやカニをはじめとした海の幸が食べられなくなるかもしれません。そこで今回は、海の生き物たちのためにも、なんとしても食い止めたい「海洋酸性化」について紹介したいと思います。

二酸化炭素って何だろう?

そもそも、「二酸化炭素」とはどのようなものなのでしょうか。まずはそこから解説します。

 

二酸化炭素は、惑星の大気中に自然に存在する物質です。濃度は星によって異なり、地球の大気には約0.04%の濃度で含まれています。地球の大気を構成する物質の中で、最も多い成分は窒素です。約78%を占めており、次に約21%の酸素が続きます。なお、地球の隣の惑星、金星や火星では大気のほとんどが二酸化炭素です。地球もかつては二酸化炭素の濃度が高かったものの、海に吸収されたり、植物が光合成に使ったりして、徐々に減少していったと考えられています。

<二酸化炭素の作られ方>

二酸化炭素は、生物の呼吸や、炭素を含む物質の燃焼で生成されます。

皆さんも学校で「生物は呼吸するときに酸素を吸い込んで二酸化炭素を吐く」という仕組みを習ったと思いますが、実際に人が吐いた直後の空気の成分を調べると、酸素は19%に減少し、二酸化炭素は4%に増加することがわかっています。また、炭素が燃えるときに空気中の酸素と結合して、二酸化炭素に変化します。ほかにはアルコール発酵や、火山の噴火でも生成されることが知られています。

<二酸化炭素の主な性質>

・無色無臭

・不燃性

・水に溶けやすい

・空気より重い

・温室効果がある

 

二酸化炭素には、他の物の燃焼を妨げる性質があります。

例えば、空気中の二酸化炭素濃度が約2.5%になると、ろうそくに点火できません。また、二酸化炭素は大変水に溶けやすく、二酸化炭素が溶け込んだ炭酸水は、飲料や入浴などに広く使われています。ほかにも、大気中の二酸化炭素には、地球が赤外線として宇宙に出している熱を吸収して、再び地上に放出する性質(温室効果)があります。

 

この温室効果の性質により、「地球温暖化」の原因としてもしられるようになった二酸化炭素ですが、実は最近、二酸化炭素が海水に溶け込むことで起こる「海洋酸性化」という環境問題も注目されています。

「海洋酸性化」って何?

まだ聞きなれない人も多いかもしれませんが、「海洋酸性化」とは、二酸化炭素が海水に溶けて海水のpH(水素イオン指数)が長期的に下がる現象のことで、海の生き物に及ぼす影響が危惧されています。

 

伊豆諸島の式根島では、「海洋酸性化」が海の生き物に及ぼす影響の調査が進められています。式根島周辺の海は、海底から噴き出した火山活動の泡により、周囲の海水が酸性化しているため、未来の海の環境を予測する天然の実験場として最適な場所なのです。

 

現在の海の平均的なpH と同じpH8.1の水域では、サンゴ礁にカラフルな魚が集う豊かな海が広がっています。しかし、そこから少ししか離れていない、今世紀末の海のpHと予測されているpH7.8の水域では、サンゴがほぼなくなり、大きな海藻も魚もいなくなっていました。この水域の海底の生物を採取し、微細なものまで調査したところ、未来の海では生物の種類が現在の海よりおよそ30%も少なくなっていました。この調査結果により、海洋酸性化が進むと海の生き物の多様性が失われ、生態系の単純化が進むことが明らかになりました。

 

アメリカ海洋大気庁の海洋酸性化シミュレーションによると、2050年には世界の海の平均pHが7.9になり、今世紀末にはpH7.7になると予想されています。pH7.7になると、貝類、海老・蟹など殻をもつ生き物たちの殻が溶け、成長できなくなり死んでしまうといった影響がでてきます。

 

既に、一部の海では海洋酸性化の影響が始まっており、アメリカ西海岸では2005年にカキの幼生が大量に死んでしまう現象が起きました。

 

日本でもその影響を計るため、カキの養殖が盛んな全国5つの地域で調査を開始しました。2年間、pHを継続して測定したところ、計測期間中に2回、pH7.5を下回る危険な水準に達していました。偶然にも、pH7.5を記録した時期とカキの幼生が生まれる時期と微妙にずれていたことから、これまでのところ瀬戸内海では影響がでていませんが、油断はできない状況だということがわかりました。

 

殻をもつ生き物以外にも、魚への影響も示唆する検証結果がでており、二酸化炭素がこのまま増え続ける場合、2100年には世界の漁獲量が約20%減と予想されています。

 

それでは、どうすれば「海洋酸性化」を食い止められるのでしょうか?次はその対策を見ていきましょう。

「海洋酸性化」の対策は?

1.二酸化炭素の排出量を減らす

2. 海の生き物の赤ちゃん(幼生)が育ちやすい環境を人口的に作る

3. 二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」を増やす

 

ブルーカーボンとは、海洋生態系が蓄える炭素のことです。

海の草「アマモ」のように、成長スピードが速く、その過程で大量の二酸化炭素を吸収して体内に封じ込め、枯れれば泥となって海底に蓄積する海藻や海辺の植物を増やすことで、植物たちが吸収する二酸化炭素を増やすことになり、「海洋酸性化」の効果的な対策になることが期待されています。

 

この取り組みが成功すれば、最大で年間24億トンの二酸化炭素を削減することにつながりますが、人間の営みによって排出されている二酸化炭素は年間187億トンにも及ぶため、このままの状態では、どんなにブルーカーボンの対策を行っても、地球上の二酸化炭素の量を減らすことはできません。

 

「海洋酸性化」を食い止めるためには、排出する二酸化炭素をゼロに近づける取り組みを行いつつ、ブルーカーボン対策を行う必要があります。

家庭でできる「二酸化炭素削減」の取り組みは?

二酸化炭素の排出量を減らすためには、化石燃料の使用を控えるのが近道です。

 

日常生活で使う電気やガソリンは、ほとんどが化石燃料で作られていますので、節電や公共交通機関の利用を心がければ、家庭でも温暖化抑止に大きく貢献できるでしょう。

 

また、ゴミの処理や輸送にも、多くのエネルギーが使われます。以下のように、家庭ゴミを出さない工夫も有効ですので、ぜひ、親子で取り組んでみてください。

 

・食べ物を残さない

・買い物の際は長く使えるものを選ぶ

・エコバッグやマイボトルを持ち歩く

 

ここまで、二酸化炭素について、海の生き物に及ぼす影響や、排出量を削減するための対策を紹介してきました。

 

温暖化を促進するなど、厄介な存在として語られることが多い二酸化炭素ですが、生物の活動に密接に関わる重要な気体です。二酸化炭素がなければ、地球に生物が誕生することもなかったでしょう。

 

本来、二酸化炭素は多少増えても、森林や海が吸収して大気のバランスを保ってくれます。しかし、人類は多くの森林を伐採し、その面積を大きく減らしてしまいました。また、化石燃料など炭素を含むエネルギー資源を燃やして大量の二酸化炭素を排出し、地球上の大気のバランスを崩したのです。

 

私たちひとりひとりがその責任について考え、他の生き物たちと共生できる環境づくりのために、できることから少しずつでも取り組んでいきましょう。

 

 

参考:NHK「サイエンスZERO」

   HagKum

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