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今年最大の天体ショーが11月8日に!皆既月食と日本の天文学の歴史

2022年11月02日

11月8日、2022年最大の天文現象になる皆既月食が起こります。

皆既月食とは、太陽・地球・月が一直線上に並び、太陽に照らされてできた地球の影に月が隠れることで、地上からは月が欠けていく様子が見られる現象です。

11月8日は、日本全国で欠け始めるところから全て欠けるまでを見ることができるまたとない機会になるでしょう。

 

また、12月1日には、火星が地球に最接近します。2020年10月以来2年2か月ぶりのことで、マイナス1.8等まで明るくなる火星の赤い輝きに注目してください。

 

ちなみに、等級とは、天体の明るさを表す単位で、整数または小数を用いて「1等級」「1.25等級」「-1.46等級」などと表されます。等級の数値が小さくなるほど明るい天体、大きくなるほど暗い天体となります。

 

今では各地に観測所が設けられ、天体観測が一般的になりましたが、日本で天文学が発展したのはいつ頃なのでしょうか。

日本初の暦

天文学はもともと、暦を編むために研究された学問です。

日本では平安時代から約800年もの間、中国から伝わった「宣明暦(せんみょうれき)」が使われ続けてきました。しかし、この暦は中国の経度のままで計算されている上、何百年もの間に実際の季節とのずれが生じていました。そのため、当時の暦は政府から権限を与えられた専門家が計算しなければ作成できないほどに複雑なものでした。

 

江戸時代に入り約80年経った頃、より正確で日本の暮らしにあった暦を作るため、星の動きを実際に観測して作られたのが、初の日本独自の暦である「貞享暦(じょうきょうれき)」です。「貞享暦」は、1684年、幕府に採用され、翌年から施行されました。

日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ

この「貞享暦」を作成したのが、渋川春海(しぶかわ はるみ)という人物です。

春海は、自ら新しく制作した渾天儀(こんてんぎ)という測定器で星の位置の観測を行い、中国から伝わった283個の星座の星々を実際に観測して照合し、新たに308個の星、61個の星座を追加。それを元に星図と天球儀も制作しました。

 

春海は多才な人物で、囲碁、神道、算術も深く学びました。高い学識によって書いた「瓊矛拾遺(ぬぼこしゅうい)」という書には、地と水が球を形作り、それを丸く天が包んでいる世界観を紹介し、物事の成り立ちや神の道理に基づいて人はどう振る舞うべきか、などが書かれています。さまざまな分野を深く研究し、世界のあり様や生命の起源を探究する姿は、日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと呼ぶにふさわしい人物だったようです。

江戸時代に発展した天文学

春海の暦が採用されると同時に、暦を取り扱う部署が幕府に新設され、江戸市中に天文台が設置されました。そこでは天体観測が行なわれ、暦の精査や新たな暦作りが行われました。かの8代将軍吉宗も天体望遠鏡を作らせ、自ら観測を行なったといわれています。時代劇のドラマで、望遠鏡を覗く殿様を目にしたことがある人もいるかもしれませんね。

 

その後、それぞれの世代の学者らによって、西洋の理論を取り入れるなどして、より一層ずれの少ない暦を目指し、新しい暦は明治時代になるまで、約50年ごとに改暦されていきました。

 

江戸後期になると、天文学は暦を作るためだけではなく、次第に宇宙への興味を伴い始めていきました。一般の人でも手軽に望遠鏡を入手できるようになり、入門書も出版されて、天文学は広く親しまれていきました。ちなみに江戸時代の民衆の識字能力は世界でも高く※1、ロボットの起源ともされるからくり※2なども流行しました。当時の江戸の文化的レベルの高さがうかがえます。

 

今でも日本における天文学の興味関心は高く、2022年には日本から初めて、中高生5名が国際天文学オリンピック※3に参加します。次世代による今後の天文学の発展も楽しみですね。

 

以上、今回は2022年後半に見られる天体ショーと、日本の天文学の発展についてみてきました。今では、北海道から沖縄まで、日本各地に誰でも気軽に見学ができる公開天文台が140施設あります。ぜひ親子で訪れて、宇宙を感じてみるのはいかがでしょうか?

 

※1 江戸時代の民衆の識字能力/明治16年に行なわれた、江戸期の寺子屋数の調査によると、全国に15,560の寺子屋が存在したとされる。また外国人研究者が「明治3年時点での読み書きの普及率が、現代(1965年当時)の発展途上国よりかなり高い。おそらく一部のヨーロッパ諸国と比べてもひけをとらなかっただろう」とも分析。(広島大学教育開発国際協力研究センター「国際教育協力論集」より抜粋)

 

※2 からくり/電力を使わずにねじで動く機械的仕組み。室町時代に日本に入って来た西洋時計を工夫し、江戸時代には茶汲み人形や和時計など独自の進化を遂げた。

 

※3 国際天文学オリンピック/1996年から開催されている国際科学オリンピックのひとつ。中学生・高校生向けの天文学に関する世界大会。

 

参考サイト 科学技術振興機構、tenki.jp、日本天文学オリンピック

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