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入試で役立つ化学 触媒について
2022年08月13日
今回は触媒について考えてみます。
今年の共通テストでは非晶質(アモルファス)が出題されましたが、
学校の授業ではあまり触れられることが少ない内容なので、
できなかった受験生が多かったのではないかと思います。
触媒もそのような内容になるので、自分で一度整理しておく必要があるでしょう。
教科書の記述では、触媒とは、「反応の前後で自身は変化せず、反応速度を大きくする物質」と定義されています。
例えば、薄い過酸化水素水は常温で放置してもほとんど変化は見られませんが、酸化マンガン(Ⅳ)の粉末や塩化鉄(Ⅲ)水溶液を少量加えると、分解反応が起こり、酸素が発生します。
これは、酸化マンガン(Ⅳ)や塩化鉄(Ⅲ)水溶液の鉄(Ⅲ)イオンによって、反応速度が大きくなったためで、酸化マンガン(Ⅳ)や鉄(Ⅲ)イオンは反応の前後で変化していません
このような物質を触媒といいます。
触媒の働きとして、覚えておきたいのは、活性化エネルギーを小さくすることと平衡が移動しないことです。
触媒を用いると、触媒を用いない場合よりも活性化エネルギーが小さくなるので、反応速度は大きくなります。
また、活性化エネルギーが小さくなるので、逆反応の反応速度も大きくなります。
しかし、活性化エネルギーが変化するだけで、反応物や生成物のもつエネルギーは変化しないので、反応熱は変化しません。
そして、化学平衡に関しては、触媒を加えると正反応の反応速度が大きくなるのと同時に、
逆反応の反応速度も大きくなるので、平衡状態に達するまでの時間は短くなります。
しかし、平衡の移動は起こりません。
酸化マンガン(Ⅳ)という物質についてみておきましょう。
この酸化マンガン(Ⅳ)は今回のテーマである触媒として出てくることもありますが、酸化マンガン(Ⅳ)が触媒でない反応も出てきます。ここは注意が必要です。
無機化学の分野に、気体の発生方法があります。
各気体について、実験室で発生させる決まった方法があり、その方法が紹介されています。
その中で、酸素を発生させる方法として、酸化マンガン(Ⅳ)に過酸化水素水または塩素酸カリウム水溶液を加えるという方法があります。
この時の酸化マンガン(Ⅳ)の役割は触媒です。
過酸化水素水に酸化マンガン(Ⅳ)が触媒として作用し、分解反応が起こり、酸素が発生します。
塩素酸カリウム水溶液でも同様です。
この反応の反応式には酸化マンガン(Ⅳ)は出てきません。
また、塩素を発生させる方法に、酸化マンガン(Ⅳ)に濃塩酸を加えて加熱するという方法があります。
この時の酸化マンガン(Ⅳ)は触媒ではありません。
この反応は酸化還元反応で、酸化マンガン(Ⅳ)が酸化剤で、濃塩酸が還元剤となります。
反応式をよくみてしっかり区別がつくようにしておきましょう。
教科書に登場する触媒で覚えておきたいものとして、以下のような触媒があります。
硫酸の工業的製法である接触法の中で、二酸化硫黄と酸素を反応させて三酸化硫黄が生成する反応がありますが、この反応では、酸化バナジウム(Ⅴ)が使われます。
アンモニアの工業的製法であるハーバー(ハーバー・ボッシュ)法の中で、窒素と水素を反応させて、アンモニアが生成する反応がありますが、この反応では、四酸化三鉄が使われます。
硝酸の工業的製法であるオストワルト法の中で、アンモニアと酸素を反応させて、水と一酸化窒素が生成する反応がありますが、
この反応では、白金が使われます。
また、有機化学では触媒を用いた反応が多いのですが、代表的なものは、水素を付加する反応で、ニッケルが使われます。
どんな反応にどんな触媒が使われるかは、がんばって覚えましょう。
最後に、光が関係する反応をまとめておきます。
これも、問題集などに出てくる機会が少ないようなので、一度しっかり整理しておく必要があります。
化学反応の中には光エネルギーを与えると反応が起こる場合があります。
水素と塩素の混合気体に強い光を当てると、塩化水素ができます。
このように光エネルギーによって引き起こされる反応は光化学反応と呼ばれています。
また、化学反応の際に光を発する現象があり、化学発光または化学ルミネセンスといいます。
代表的な例として、ルミノール反応があります。
ルミノールは、塩基性の溶液中で過酸化水素やオゾンなどで酸化すると、明るく青い光を発します。
これは血液中の成分によって反応が促進されるので、血液の検出に用いられています。
光触媒も覚えておきたいです。
光触媒といえば、酸化チタン(Ⅳ)が有名です。
酸化チタン(Ⅳ)をコーティングした面に光が当たると、表面に付着した有機化合物が酸化されて分解したり、酸化チタン(Ⅳ)の表面が水になじみやすい性質に変化して汚れをつきにくくします。
光触媒は空気清浄機、ビルの外壁、自動車のドアミラーなどに実用化されています。
(甲府駅北口校 N.S先生)