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突然発症することも!<大人の食物アレルギー>日常生活に潜むリスク
2023年06月28日
この20年、アレルギー症状で医療機関を受診する人が増え続けているそうです。その中でも、いままで問題なく食べていたのに、突然、特定の食べ物に対するアレルギーを発症する大人が増えており、いまや成人の10人に1人が食物アレルギーを発症しているといわれています。そこで今回は、大人になって突然発症することがある食物アレルギーについて、発症の要因や仕組みをご紹介します。
食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれる「アレルゲン(アレルギーの原因となる物質。ほとんどはたんぱく質)」に「免疫」機能が過剰に反応してしまい、体にさまざまな食物アレルギー症状をおこすものです。
「免疫」はもともと体に害となるものを排除する働きです。通常は体の栄養源となる食べ物が消化され吸収されても反応しませんが、免疫機能や消化吸収機能になにかの問題があると、吸収された食べ物を害があるものとみなして排除しようとし、そのために多くの食物アレルギー症状がおこるとみられています。
食物アレルギーでよくある症状を種類別にご紹介します。
◆即時型食物アレルギー
原因となる食べ物を食べて主に2時間以内(多くは食べた直後から30分間)に、皮膚や粘膜、消化器、呼吸器などに症状が現れるものです。
<よくある症状>
食べたあとに顔や体にポツポツとじんましんが出てきた。
食べたあとにのどがイガイガして、元気がなくなってきて嘔吐した。
食べたあとに咳が出てきて、全身が赤くなって息が苦しくなった。
◆口腔アレルギー症候群
生の果物や野菜、大豆(主に豆乳)などを食べたあとに、唇や口の中、のど、耳の奥などにかゆみや腫れ、痛みなどを感じるものです。この食物アレルギーは特定の植物の花粉症と関連があるとみられていて、花粉アレルギーのある人が、その花粉と似たアレルゲン(たんぱく質)をもつ果物などを食べた場合に、交差反応をおこして発症するものです。
<よくある症状>
りんごやもも、洋梨など生の果物や野菜、大豆(主に豆乳)を食べたときに、口の中やのど、耳の奥などにかゆみや痛みを感じる。
◆食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食べ物を食べてから2時間以内(大部分の場合)に運動をすると症状が現れるものです。特定の食べ物を食べただけでは症状はおきず、特定の食べ物を食べたあとに運動をすると症状が出るのが特徴です。また、特定の食べ物を食べたあとの運動以外に、疲労、寝不足、かぜ、ストレス、月経前症状、気象条件、アスピリンの服用などが症状を誘発することもあります。複数の要因が重なると、症状がより誘発されやすくなります。
<よくある症状>
食後に運動をしたら、じんましんやむくみ、咳が出てきて、呼吸も苦しくなった。
大人になってから突然発症する食物アレルギーには、アレルギー反応の原因となる食べ物を食べる以外の理由で発症することがあります。その理由は、アレルギー物質が皮膚からも吸収されることにあります。ここからは、“食べる以外で発症する食物アレルギーの要因”についてご紹介していきます。
◆メークで食物アレルギーに
化粧品や食品に含まれる赤い色素がアレルギーの原因になる場合があります。
赤い色素(カルミン)が含まれる化粧品を日常的に皮膚に塗布していることで、アレルギーが起きやすい状態になり、ハム・ソーセージや海外製のお菓子など、赤い色素(コチニール)が入った食品を食べた時にアレルギーを引き起こす場合があります。
<赤い色素によるアレルギーの兆候と対策>
兆候:アイメイクをしたときに目の周りがかゆくなる
対策:カルミン入りの化粧品を避ける
◆サーファーに多い納豆アレルギー
ある医療機関が納豆アレルギー患者13人を調べたところ、13人のうち11人がサーファーでした。そこから、サーファーは何度もクラゲに刺されることで、同じアレルギー物質が含まれる納豆に対するアレルギーが起きやすい状態になることがわかりました。
◆医療従事者がなりやすいバナナアレルギー
業務上、日常的にゴム手袋を使用している医療従事者は、ゴム(ラテックス)アレルギーが発症しやすい状態にあります。ラテックスアレルギーになると、バナナ・栗・キウイ・アボカドに対してもアレルギーを発症することがあります。
◆ペットを飼う人は肉アレルギーになりやすい
ペットに付着したマダニにかまれることで、牛肉・豚肉のアレルギーになる場合があります。ペットのダニ対策を徹底するとともに、牛肉・豚肉を食べた後に、かゆみなどを感じた場合はアレルギーを疑いましょう。
ここまでにご紹介した、皮膚から入る成分が原因の食物アレルギーは、原因となる食物・成分をできるだけ接触・吸収しないようにするとよくなっていくことが多いといわれています。まずは専門の医療機関で検査して自分のアレルギーの状態をよく確認し、対応については医師に相談しましょう。
ここからは、皮膚から入る以外で起こるアレルギーについてご紹介します。
小麦アレルギーの発症例としてよく知られるようになったのが、先ほどもご紹介しました「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」です。
小麦食品を食べただけではアレルギー症状がでなくても、運動や飲酒など、二次的要因を組み合わせることで強いアレルギー反応が現れることがあります。症状は軽い蕁麻疹で済む場合もありますが、意識を失う重篤なアナフィラキシーショックを引き起こす場合もあります。その際は躊躇なく救急車を呼んでください。
<アレルギー症状が重症化する要因>
原因食物+運動・飲酒・入浴・疲労・解熱剤の服用
口腔アレルギー症候群としてもご紹介しましたが、花粉症の人は、いくつかの食べ物に対してもアレルギーを引き起こしやすいことがわかっています。その理由は「交差反応(交差反応性)」にあります。交差反応とは、花粉に含まれるたんぱく質と食べ物に含まれているたんぱく質の構造が似ているために、食べ物を食べたときに体が花粉の侵入と誤って認識してアレルギー反応を起こすことです。
<花粉の種類別/アルギーが起きやすい食べ物>
2~4月 スギ・ヒノキ/トマト
3~6月 ハンノキ・シラカバ/
もやし じゃがいも 豆乳 豆腐 キウイ りんご 桃 さくらんぼ
5~6月 イネ科/トマト じゃがいも メロン スイカ キウイ オレンジ ピーナッツ
8~9月 ブタクサ/きゅうり ズッキーニ メロン スイカ バナナ
9~10月 ヨモギ/セロリ 人参 マンゴー スパイス(クミン・コリアンダー・フェンネル)
上記すべての食べ物に必ずアレルギーが起こるわけではありませんが、可能性があることをしっておくことが大事です。
以上、今回は食物アレルギーについてご紹介してきました。食物アレルギーは複雑で、そのときの体調や、食べた量・時間など、さまざまな要因で症状の出方が異なる場合があります。また、血液検査の結果だけでは正確に把握しきれないこともあるので、血液検査だけでなく、問診やパッチテストなど複合的な情報をもとに、専門の医療機関に診断をしてもらうことが重要です。
自分が持つアレルギーについて周りに話しづらかったり、話すと必要以上に気を使われることに気が引けたりして疎外感を味わっている人が多くいます。アレルギーに関する情報が世の中に浸透していくことで、周りに話しやすくなったり、アレルギーに対応している飲食店が増え、食物アレルギーを持つ人の外食の幅が広がっていくといいですね。
アレルギーポータル
https://allergyportal.jp/just-in-case/
参考/NHK「あさイチ」、meiji