KATEKYO知恵袋
新設大学が続々!「データサイエンス学部」学ぶ内容や将来の仕事は?
2023年04月05日
今春、「データサイエンス」系学部を新設する大学が相次いでいます。
72年ぶりに新学部を設ける一橋大学を含め、少なくとも17大学で「データサイエンス」系学部が誕生し、全国の定員は約1900人増える見通しです。そこで今回は、各業界から需要が高いデジタル人材を育成する「データサイエンス」学部について、学ぶ内容や将来の就職先・仕事の内容についてご紹介していきます。
10年前までは耳にすることも少なかった「データサイエンス」という言葉ですが、日本でもここ数年、ITの活用で人々の生活を利便性の高いものに変化させるDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進められています。DX化の例として、ウェブサイトデータや実店舗の顧客データなど、膨大なデータの分析・活用により、事業の収益拡大やサービス利用者の利便性向上などがあげられます。そこで必要となるのが、数学や統計学を駆使してデータ分析を行うデータサイエンスのスキルです。このデータサイエンスの知識を持つ人材が、日本は諸外国と比べて圧倒的に不足している状態にあります。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2022」によると、ランキング上位5カ国は、デンマーク、米国、スウェーデン、シンガポール、スイスとなり、東アジアでは韓国が8位、台湾が11位、中国が17位となりました。日本は63カ国・地域の中で、前年から1つ順位を下げ、過去最低の29位となりました。
このランキングからもわかるように、デジタル競争が加速する世界経済の中、日本においてもデジタル人材の育成が最優先事項であることが、各大学のデータサイエンス学部の新設の背景にあると考えられます。
データサイエンスとは、データの分析についての学問分野で、大量のデータから何らかの意味のある情報や補足関連性などの《価値》を導き出す学問です。ICT(情報通信技術)の進化した現代では、あらゆるビジネスや医療、教育、行政等において、高度なデータ処理能力、データ分析力が必要となっています。データから有益な《価値》を引き出すためには、これらの能力に加え、さまざまな分析経験を積むことが求められています。
データサイエンスの知識を身に付けると、「データサイエンティスト」という専門職として活躍することができます。データサイエンティストの具体的な仕事は、主に分析環境の構築・運用・分析・レポート作成などです。分析環境の構築とは、業務システムやWebサイトのデータなどを収集・蓄積し、データを活用できる仕組みをつくることです。データ分析は、いまや暮らしのさまざまなシーンで生活者の利便性の向上や、ビジネスの課題解決に活用されています。
データサイエンティストは機械学習研究や統計の専門家として、幅広い業界で活躍することが期待されています。
<データサイエンティストが活躍する業界>
研究機関
医療機関
コンサルティング会社
IT企業
電気・自動車メーカー
製薬企業 など
<データサイエンス学部卒業生の就職先例>
情報産業(通信、IT、コンサルティング、メディア)
製造業
金融業
インフラ業
建設業
流通小売業
技術サービス業
教育業
保険業
国家公務
地方公務
データサイエンス学部では、統計や情報処理に関連する資格を取得することができます。滋賀大学を例に、データサイエンス学部で取得できる資格をご紹介します。
・社会調査士
・SAS Academic Specialization
・情報処理技術者試験
・統計検定
・品質管理検定
ここまで、データサイエンスの内容や学ぶ意義、就職先などをご紹介してきました。データサイエンティストはこれからの社会に必要不可欠な職業ですが、進学については自分に合う職業なのか見極めたうえで検討したいですよね。最後に、どんな人がデータサイエンティストに向いているのか、その特性をご紹介します。
データサイエンティストに向いているのは、目的や課題に対して情報を集めて分析することが好きな人や、多種多様な情報を整理してまとめるのが得意な人です。データサイエンティストの仕事では「分析したデータをビジネスにどう活用するか」という視点が重要になってきます。常に先をイメージしながら予測を立てたり、論理的に答えを導いたりすることができる人に向いているといえるでしょう。経営やビジネス、マーケティングなどに関する幅広いビジネススキルも求められるため、勉強することを嫌がらない、向上心の強いタイプの人に適性があります。また、IT部門や業務部門など、さまざまな部署と連携して仕事を進めていくことも多いので、周りの人の意見に耳を傾け、ともにプロジェクトを進行していけるコミュニケーション能力も必要です。
データサイエンスはデータを扱う学問ですが、それを活用するためには、人の気持ちや行動を理解し、推測することが重要です。理論的にデータを読み解く冷静さと、人に寄り添う共感力が必要な学問といえるのかもしれません。
参考:滋賀大学、独立行政法人日本貿易振興機構